偽恋人の恋愛事情



壇さんはお父さんに軽く頭を下げたあと、少しあたりを見回す

なぜか兄が私の前に立ちはだかり、壁になりやがっていたが、後ろにいた私を見つけた


「あっ!…ゆ、雪音さん…ですね」

あ、私もここにいたらいけないよね

邪魔くさい兄の隣を抜けて前に出る

「はい。城木雪音です」

「あ………」


……?

壇さんは私をまん丸の目で見て固まる

……?

か、固まってる


「あの…?」

「あっ!あ、はっ、あ、そ、すみません」

あわあわしている…

「ゆっ、ゆ、あ」

ちょ…

「雪音さっ、あ、えっと、だっだん!です!はい」

ちょっ…


「ふっふふ」

あまりの慌てように思わず笑い声が漏れる

「ふふふっ」

「へ」

「落ち着いてください、ふふ」

もっと、高慢な人かと思ってたからあまりの予想の裏切られ方に笑いが溢れる


「……わぁ…」

「ふふ、ごめんなさいね、笑ってしまって」

「……いえ…あの…本当に…お綺麗な方で…ちょっと緊張してしまい」

緊張から来ていたのか、あの慌てようは

「もっとかっこよく決めようと思っていたのですが…」


ふふふ

きっとこの人は良い人だ


「リラックスしてくださいね」

「…はい。あのこの度はこちらの勝手な要望を受けてくださり、ありがとうございます」

「いえこちらこそ、お招きありがとうございます」

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