偽恋人の恋愛事情



「…本当に…その……綺麗です」

壇さんは相変わらずまん丸の目で私を見ながら、少し口を開けている

「あ、ありがとうございます」


「壇さん」

「あ、はい!」

後ろにいたお父さんがまた固まりそうになっていた壇さんに声をかける


「今日はよろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。大事な娘様のお時間をいただき、本当にありがとうございます」

「…いえ。雪音が承諾した話です」

「その…雪音さんは我々のことを一切知らないのにこんな急のお見合いなど非常識極まりないと思っていたのですが…
私も知らぬうちに父が勝手にこのような企画をしてしまい…雪音さん含め、城木家の皆様を振り回してしまったこと誠に申し訳ありません」


わあ

しっかりしてる人だ

一つ上って言ってたよね

…すごいなぁ


「気にしないでください」

こう言えるのは当事者の私だけなので、言葉に詰まる父親に助け舟を出すつもりでそう言う

「雪音もそう言っていますから」

便乗してぎこちなく笑う父親


兄はずっと不機嫌な顔をしている

「お兄様も、ありがとうございます」

「お義兄さんと呼ぶのはまだ早いかと」


おいぃぃ!

漢字違うから!!


「す、すみません」


もう!やめてよ兄さん!!

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