偽恋人の恋愛事情



「…他に、助けを求めるアテはありますか?」

…こういう時一番強いのは

会社の事情を知らない人間

外部の人間


そしてその中で…私を助けてくれる人…となると


「…楓くん」

「え?」

ボソリと声に出てしまった名前

「あ、いや…えっと」


「……もしかして、さっきの話の人ですか?」




「…その人なら助けに来ますか?」




「……来てくれると…思います」



これ以上借りは作りたくないのだが…

でも今日…私は彼の家に帰ると決めているのだ

彼も私を待っているんだ


目を背けるんだと、春正さんにも自分にも宣言しておきながら

こんなんでは矛盾にも程がある

そんなことわかっている


でも…

身体が本心が、彼を求めているのだから仕方ないのだ


きっと未来の私が楓くんに頼ったことを死ぬほど後悔すると思う

でもそれはもう、その時の私に任せる

すまないが死ぬほど後悔して苦しんでくれ


だから…今は

近くにいることを許される今は

頼ることを許される今は

後悔を先延ばしにさせてくれ


「…彼ならきっと…助けてくれます」

「…」


身勝手でごめんなさい

楓くん
< 221 / 296 >

この作品をシェア

pagetop