偽恋人の恋愛事情
「…他に、助けを求めるアテはありますか?」
…こういう時一番強いのは
会社の事情を知らない人間
外部の人間
そしてその中で…私を助けてくれる人…となると
「…楓くん」
「え?」
ボソリと声に出てしまった名前
「あ、いや…えっと」
「……もしかして、さっきの話の人ですか?」
…
「…その人なら助けに来ますか?」
…
「……来てくれると…思います」
これ以上借りは作りたくないのだが…
でも今日…私は彼の家に帰ると決めているのだ
彼も私を待っているんだ
目を背けるんだと、春正さんにも自分にも宣言しておきながら
こんなんでは矛盾にも程がある
そんなことわかっている
でも…
身体が本心が、彼を求めているのだから仕方ないのだ
きっと未来の私が楓くんに頼ったことを死ぬほど後悔すると思う
でもそれはもう、その時の私に任せる
すまないが死ぬほど後悔して苦しんでくれ
だから…今は
近くにいることを許される今は
頼ることを許される今は
後悔を先延ばしにさせてくれ
「…彼ならきっと…助けてくれます」
「…」
身勝手でごめんなさい
楓くん