偽恋人の恋愛事情



『はい』


しばらくして、インターホンの向こうから渋い声が聞こえた

…お父さんか?


「…いきなりすみません、鈴本楓というものです。雪音さんの同級生です」

『……すず、もと…』




俺を知ってるのか?


「お願いします!話をさせてください!雪音さんのことです!」

はぁはぁと息混じりの声で叫んだ



『………君は、雪音と交際をしている人か?』

……

「いえ…まだ、していません。でも、今後、必ずするつもりでいます」

『……』


「全て話している時間はありません!雪音さんから助けてと連絡が来ました!お願いします!力を貸してください!」


頼む!

父親だろ!

雪音を、愛してるだろ!


『…雪音は今お見合いに行っている。助けを求めるようなことはないはずだ』

……は?


な、なんなんだよこの人


「雪音さんから直接連絡が来たんです!」

『私には来ていない、だから問題ない』

……


…雪音が水をかける気持ちもわかる


なるほど

そりゃ逃げ出したくもなるわな


…雪音の家族だ

礼儀正しくすべき相手だ


でも

俺は雪音の家族より、雪音の方が大事だから…

もうどうにでもなれ

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