偽恋人の恋愛事情



『……鈴本楓くん』

「はい」

『…君は、あの子の何をそんなに…愛しているんだい』


…簡単な質問をするもんだ


「全部です。花と見間違う美しさも、そこから想像できないほどの強い心も、ちょっと抜けてるところも、普段我慢してるからタガが外れるとヤバいところも。品行方正を掲げている割には、表情がすごく変わるところも。全部です。
でも一番好きなのは、名前を呼んでくれる時の表情です」



『…そうか。君の前ではあの子は表情が変わるのかい』

「ええ、ものすごく」


『…そこで待ちなさい』



「はい」



あー

もう感情に任せて叫びまくったから

何を言ったのか覚えていない

結構やばいこと言ったかもしれない


でももういい

俺にはわかった


お父さんは、雪音を心から愛しているよ


果てしなく不器用なだけだ

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