偽恋人の恋愛事情
「…壇さんはかなり特殊な人間なんだ」
かなり荒い運転をしながらお父さんが言った
「元ヤクザで、今の会社もかなり凶悪な方法で成り立たせている。敵に回すと厄介だから安泰な関係を築くために接していた。社長からもこのお見合い話は頼むから受けてくれと言われていた。
雪音を行かせるのは少し怖かったが、むしろ断ったり下手に手を出したりした方が雪音が危険かと思って従っていた」
…そうだったのか
「お見合いも向こうの気が済むよう受けさせて、その上で断った方が安全だと思ったのだが…雪音自身からSOSが来たのであれば…動くべきだった」
ちゃんと、お父さんは考えていたんだ
雪音が無事に帰ってこれる選択を
「…すみません、何も知らずにあんなこと言って」
「いや…君の意見は何も間違っていない。むしろ感謝しているよ。いつまでも壇社長に怯えているわけにもいかないし、実の娘が絡んでいるのにただ待っているなんて馬鹿げた話だ」
…それはそうだな
「というか、最初から雪音にその事情話しておけばよかったんじゃないすか?雪音だって優秀なんですから知っていたらもっとうまく立ち回ったと思いますよ」
「……確かに」
「……ぐうの音も出ないな」
不器用な家族だな