偽恋人の恋愛事情



しばらく車を飛ばし、街外れの海沿いにある豪邸が近づいてくる


「いた!雪音だ!」

お兄さんが窓の外を見て声を上げる


そちらを見るとシルバーの車の前に立つイカつい黒スーツのヒゲ親父と

青いワンピースに、白い一輪の薔薇を持った雪音


その横に白スーツを着た高身長の男

雪音を守るように立っている



「2人とも捕まりなさい!」



お父さんの声

そして


キキィィィ!!


という派手なブレーキ音と共に映画で見るようなスリップをかまして見事駐車を決める

いや、雪音のとーちゃんカッコよ。


「…よし。いいかい。壇さんはさっきも言ったように厄介な人間だ。どんなことをするかわかったもんじゃない。でも我々の目的は雪音を返してもらうこと。それだけだ。いいな」

「はい」



先にお父さんが出る

その様子を眺めていると


「鈴本くん」



後ろからお兄さんに声をかけられる


「…もしかして夏休みの間、雪音は君の家にいた?」



「…はい」

「そうか…雪音は君には素直に頼るんだね」


素直では…なかったような気もするけどね


「雪音を支えてくれてありがとう」


「いえ…俺たちは、持ちつ持たれつ…唯一無二の関係です」


だから


「俺には、雪音が必要なんです」

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