偽恋人の恋愛事情
「…餓鬼が…餓鬼がしゃしゃり出るなァ!!」
!
壇さんが野太い声で怒鳴る
私はビクッと震えたが、楓くんは微動打にせず私を掴む腕を離さない
「この豪邸が目に入らんのかァ!餓鬼1匹くらい潰せるぞ!その娘は壇家にふさわしい!優秀な人間を揃え、さらに高みを目指すための貴重な材料なんだ!」
ざ、材料…?
「そこを退け愚か者!子供が口出す問題じゃない!さっさとその娘を寄越せェ!」
!!
ズカズカと大股でこちらへ歩いてくる
楓くんは私の手を一層強く引き、壇さんから私を守るように抱きしめる
「雪音を材料呼ばわりするクソ野郎に従うわけないだろ!死んでも寄越すかよ!!」
壇さんに背中を向けたままそう怒鳴り、ぎゅっと強く抱かれる
「か、楓くん!」
「大丈夫、絶対離さないから」
視界の端で壇さんが腕を上げた
嫌だ!楓くんが殴られるっっ!!
ぎゅっと目を瞑ることしかできなかった
ドカッ!!
!!!
………
………ん?
確かに鈍い音は鳴った
しかし、楓くんが殴られた衝撃はわずかたりともしない
ゆっくり目を開ける