偽恋人の恋愛事情



「さっきのどういう意味?」

「……聞かないでくれ」




ふぅと息をついて、楓くんがドアを開けてくれる



「おかえり、雪音」



「ただいま!」


一週間ぶりの、楓くんの家

帰って来れて本当によかった



「先お風呂入る?」

……

前を歩く偽彼氏の背中を見る


「お腹すいた?ご飯なら用意してあるけど」





「か、楓くん」


…どうしても、聞きたいことがある


「…どうした?」

私の固い空気を感じ取ったのか、ゆっくり体ごとこっちを見てくれる


「雪音?」





「あの…どうして、偽物の恋人なのに…ここまでしてくれるんですか?」


お父さんの元へ走り、説得して

駆けつけて

壇さん相手に、あんなことを言って

身を挺して守ってくれる


あなたはそんなに優しい人?

それとも

別の理由がある?


春正さんが、あの気持ちを捨てなくていいと言ったのは…なぜ?

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