偽恋人の恋愛事情
「俺は今日、雪音の家族のもとに走って、雪音を助けに行ってここに戻ってくるまで…一度も嘘は言ってないよ」
……え?
「今日は嘘は何もついていない。雪音のお父さんにもまだ付き合ってないって言ったし、壇とかいうやつにも同級生だって言ったろ?」
…
「……なにも、ひとつも、嘘はついてない」
……じゃあ
私を…好きだと言ったのは?
「…雪音を、愛してるって言ったのも…嘘じゃない」
っ!
優しい目をして、私の髪を耳にかける
「好きだよ、雪音。偽物なんかじゃなくて…本当に好きなんだ。本当はお見合いだって嫌だった。雪音がそんなに綺麗な格好して、俺以外の人間に笑ってるなんて…めちゃくちゃ嫌だった」
…嘘
「雪音を助けに行くのも、伸ばされた手を掴むのも、全部、雪音が好きだからだ」
落ち着いた声
でもちょっと上ずった、熱を持った声
「…もう偽物は、嫌だ」
………