偽恋人の恋愛事情
楓くんが…私を、好き
好きな人が、私を、好き
……
「雪音?…それは、どんな顔?」
…
自分の頬を伝う、緩い涙
「……楓くんと、おんなじ顔」
「…っ」
「私も、楓くんが、大好きだって…そういう顔っ」
震える声を振り絞ってそう言った瞬間
引き寄せられて、抱きしめられる
楓くんの匂い
この家の匂い
「……雪音」
「うぅ…」
「なんで泣くの?」
「絶対ダメだと思ってたから…偽恋人にっ…こ、こんな感情…絶対ダメだって…」
「ダメじゃない…ダメじゃないよ。ごめんね。俺がこんな関係を提案したから…変に雪音を縛ったから」
あったかい、楓くんの熱
「もうやめよう、偽物は。本物になろう、雪音」
偽恋人の恋愛事情
バカみたいな恋愛事情
お互い、めちゃくちゃ遠回りをしてきた
そんな私たちの、恋愛事情
「うん…なる。本物がいいよ、ちゃんと好きって言える…関係になりたいよ」
「なれるよ、なろう」
強く手を回される
同じように背中に手を回す
「好きだよ、雪音」
「私も」