偽恋人の恋愛事情
唯一無二の
前代未聞の、こんなはちゃめちゃな恋
でも…
あんな不思議な関係と、めちゃくちゃな理屈とで
やってきた偽恋人も
このゴールのための道筋だったというのなら
それはそれで構わない
「あーやばい…すげぇ幸せ」
抱きしめたまま、楓くんが優しい声を出した
「ふふ、うん!幸せ」
背中に回していた手を上に持っていき、楓くんの首に手を回した
その方がうんと近くなれるから
「……あー雪音さん」
?
「そのハグの仕方だと…キスしちゃうかもしれない」
……えっ!?
思わずパッと離れる
予想外の言葉が聞こえたからだ
「…なんで離れるんだよ」
「い、いやだって…びっくりして」
「嫌?」
「い、嫌じゃないけど…」
「雪音、このこと、お父さんには秘密にして」
え…まっ
楓くんが離れていた私の腰を引き寄せる
「嫌じゃないんだろ?だったら目閉じてて」
う、うわぁ
かっこいい…こんな顔できるのこの人…
「ゆーきーねー?」
!
「はっはい!」
反射的に目を閉じてしまった
「…もうお見合いも、俺以外の人間に花散らすのも禁止ね」
花!?
そして
唇が合わさる感覚
決して短くはない時間
初めてのキス
初めての恋
初めての…ドキドキ
「ふぇ〜」
キャパオーバーになってクタッとしてしまう
「わー!ごめん雪音!ちょっと急ぎすぎた!しっかりして!」
「心臓使いすぎて…死んじゃう」
「死ぬなぁぁぁ!」