偽恋人の恋愛事情
佐賀くんはハハっと笑って軽く立ち上がった
「仲良くないよ。欲しいものはきっとしばらく一緒だから」
そう言って私を見る
「…会長、ごめんね。怖がらせて」
…
「いいえ。こちらこそ。ごめんなさい」
このごめんなさいは
佐賀くんの想いに対する
私の回答だ
「あーあ。2人の口から聞いちゃったからなー好きって言葉。もう足掻けないよ」
え?
「楓も言ってたよ?あの日、雪音のことどーしょーもなく好きなんだーってね」
なっ!!
なにそれ!
赤面する私を見てククっと笑う
「ねー会長、最後に俺のお願い聞いてよ」
お願い?
…
「可能な範囲なら」
「ははっ抜け目ないね〜」
「当然です」
少し悲しげに笑う佐賀くん
その目はほんのちょっとだけ、潤んでいたようにも見えた
「最後に、名前呼んでよ。ずっと前、呼んでくれただろ?」
名前?
ああ
勉強会の時…?
…覚えてたんだそんなこと
…
「佐賀大成くん」
私を真っ直ぐ見て、目を閉じた
少し俯いて口角を上げる
「うん。ありがとう」