偽恋人の恋愛事情
「何その胡散臭い泣芝居」
…え?
思わぬ返答が間違いなく鈴本くんの声で聞こえたので拍子抜けしてしまう
「引くんだけど」
す、鈴本くん?
軽く笑い声を混じえてそんなことを言う
「話終わりかな。だったらもういい?俺城木さん待ってるから」
笑ってるのにブラックな人って結構怖いよ、鈴本くん
「だっ…だから会長は最低なんだってば」
「泥かけられたんだよ?私たち」
かけられるようなことしたのはそっちでしょうが
「あそう。いいんじゃない?汚れたとしても元から大差ないし」
なっっ
それは言いすぎだよ
相変わらず気力の抜けた機械みたいな雰囲気のまま、鈴本くんは淡々と言葉を紡ぐ
「あんなのが生徒会長で最低…って言ってたっけ?」
めんどくさそうにそう呟く
「…そ、そうだよ」
「だって鈴本くんを騙して付き合って…私たちをいじめて、最悪でしょ?」
あら
あなた方それは発言ミスよ
この偽装カップルを持ちかけたのは私ではなく鈴本くんなのだから
行き過ぎた虚言で己の首を絞めてるわよ
「あの人のこと何も知らないくせによく言うね。なんで俺の周りってこんな低脳の猿しか寄ってこないんだろう」
あが…
思わぬ暴言に思わず口を開ける
「あの人の底知れない努力を理解できないようなお猿さんにまとわりつかれるのはこっちもストレスなので。どっか行ってくれる?」