偽恋人の恋愛事情



「聞いてたの?」

「ええ、途中から」

「そっか」

「あれは言い過ぎですよ」

「いや、流石にムカつくでしょ。俺のこんな自己中な無理強いにまで生徒会長として必死で応えてくれてるのにあんな言い方されたら」

はぁと小さく舌打ちをした鈴本くん



怒ってたんだ

私のために…怒ってくれる人がいた

…初めてだった

私のために怒ってくれる人

そんなの今までに一度とて、出会ったことがあっただろうか

そんな人物が紛れもない彼であったこと

それが…思いの外
嬉しかった





さっき、彼が言っていた言葉が脳裏をよぎる


ー あの人の底知れない努力を


わかってくれていたのだ

たった一瞬
思わず弱音を吐いてしまったあの私の言葉を

彼はちゃんと受け止めてくれていたのだ



それが…思いの外

嬉しかった



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