偽恋人の恋愛事情
ぐしゃ
テスト結果の紙を握りつぶす
…あ
階段を登っていた足が止まる
「やあ雪音」
「…兄さん」
「久しぶりだね」
「帰ってたんですね」
兄、城木晃
私の7つ上で、大学を卒業し、父親と同じ大企業に就職
社会人3年目にして営業、そして出世続きのエリート
「ご立腹みたいだね、父さん」
…
「私が不甲斐ないせいです」
「はは、相変わらず身内にも堅苦しいね」
兄がくすりと口元だけで笑う
「まあそんな気張るなよ。自分のレベルに合ったことをすればいい」
「……」
「期待されてるのは俺の方だ。雪音は違う。だから気張る必要なんてない」
「…」
「それじゃあ」
私の肩にポンと手を置いて去っていく背中
ぎりっと歯を食いしばり、自分の部屋へ向かった