偽恋人の恋愛事情
握りつぶしたテスト結果の紙をゴミ箱に投げ入れる
バタンと無駄に豪華なベットに体を投げてクッションをボスッと殴る
「……息苦しい」
この家は、ひどく息が詰まる
まるで窓のない部屋だ
牢獄だ
こんな家に帰るくらいなら野宿した方がマシだ
どうせ私が帰らなくてもあのクソみたいな家族は心配しやしない
むしろ重荷がいなくなってスッキリするかもしれない
出て行ってやろうか…いっそのこと
2度とここには帰らないで
旅にでも出てやろうか
…
でもそんな度胸はない
ここを出たところで行く当てなどない
帰る場所はない
まあ今も帰ってる気はしてないけど
城木家は父親、兄、そして私で構成される3人家族
家政婦の人が家事全般をしていて
こんな無駄に豪華な家が建ってるくらいだから
城木家はそれなりにお金持ちという家柄に属する
父親は大企業の副社長を務めるお偉いさん
兄も同じ会社に就職している
母は、私が小学生の頃に病気で他界
以降、我々家族はこんなフィクションでしか見ないような血が繋がっているだけの暖のない家庭である