偽恋人の恋愛事情
4 深層心理
「雪音!」
!
あまり時間はたっていない
相変わらず雨は痛々しく降り続いている
そんな雨音に混じって確実に聞こえた声
鈴本くんの、声
「鈴本くん!」
!
鈴本くんは一応傘は差しているけど、どんな勢いで走ってきたのか、かなりびしょびしょになっていた
ぜぇぜぇと肩で息をしながら
汗か雨かわからないけど、水がそのこめかみを伝う
「なんでっ…屋根のあるところにいないの…」
え?
はぁはぁという呼吸音に混じってそんなことを呟く
「こんな夜にっ…女の子が、びしょびしょで突っ立ってたら、危ないだろ」
あ、そうか。そうだよね
「ごめんなさい」
というか大丈夫かな
見たことないくらいゼェゼェだけど
「す、鈴本くん…大丈夫ですか」
「……はぁはぁ」
膝に片手をついて、もう片手で傘を差している
ブカブカの黒色のTシャツに、グレーのジャージ
薄い上着を羽織っていて、いつもより髪がボサボサ
「ぼさぼさだ…」
「…俺は大丈夫だよ…心配なのはそっち」
あ、そうだよね
助けてとか言ってるもんね
「とにかく入って」
鈴本くんが傘の中に私を引っ張り入れる
…汗だくだ
雨かもだけど