偽恋人の恋愛事情


ちょっといいアパートの3階角部屋

そこが彼の暮らす家だった


「水浸しです」

「お互い様、後で拭くからいいよ」

「なんかすみません」

靴下は水が染み込んでいるので、とりあえず脱いで裸足で無垢フローリングの床に上がる


も、申し訳ない
申し訳なさすぎる

いくら木の床とは言え、水の足跡がつく

恥ずかしい

ごめんなさい


「洗面所行ってシャワー浴びておいで。俺の服貸すから」

鈴本くんはそう言って、私にバスタオルを投げ渡した

「ほんとすみません」

「謝らなくていいよ」



「じゃあ、ありがとう」

「…ふふ、うん」


言われるがまま洗面所へ行く

大きな鏡がある

そこに写っているのは見たこともないほどボロボロの自分

泣きすぎて目が赤くなってるし、黒くて長い髪の毛もベタベタ


夕食時があまりにも堅苦しくて、家着で食べる雰囲気ではなかったから、わざわざ制服で食べていたのが仇となった

制服までビッショビショだ

明日も使うのに


その濡れた制服を脱いで畳み、その下に下着を隠してお風呂場に入る


…普段あの人が使っていると思うとなぜか恥ずかしくなる

だけど今はそんなこと言っていられない

爆速でシャワーを浴びて雨と涙を流す


過去1のスピードで出て、渡されたバスタオルで乱暴に髪の毛と体を拭く


…はぁ

私何やってんだろ

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