偽恋人の恋愛事情





「…何があったのか、聞いてもいい?」

私をリビングの椅子に座らせてその正面に膝をついて座った鈴本くんが



とびきり優しい顔をする


「…ゆっくりでもいいですか」

「もちろんだよ」

私たちは偽物の恋人で、真の関係は赤の他人

だからこそ

話せることがある



ーーーー



「…だから飛び出してきたの?」

「はい」

バカだとは思ってるよ


さっき起こったことを、今までの父親や兄との関係性を、ゆっくりと辿々しい言葉で伝えた

鈴本くんは真剣な顔で聞いてくれた


しかし、私が話を進めるにつれ、その表情は曇っていった

こんなくだらないことで助けを求めたのを幻滅されたのかもしれない


「…」

「…幻滅しましたか?」

「…は?」


白雪姫とか呼ばれる品行方正な城木雪音は

実際、そんな人間ではないのだ

口も性格も悪ければ


「学校ではあんな完璧な仮面をつけておきながら本当はこんなことでキレ散らかすような、器の小さい人間だったんです。私って」


鈴本くんの顔を見られなくなって俯いた

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