偽恋人の恋愛事情



「お世話になりっぱなしですね」


登校中

慣れない道を並んで歩く楓くんに申しわけなくなった


「別にいいよ。頼れって言ったの俺だし。雪音頑固だからなかなか頼られないだろうと思ってた矢先、頼ってくれてちょっと嬉しかった」

またそんなことを言う

こやつがモテるのに少し納得がいった


「初めてですよ。誰かにこんな風に助けてもらったの」

「だと思った」

隣を歩くスピードは一緒で

車道側に当然のように立っているこの人


「雪音さ、だんだん声が低くなってるの知ってた?」

え?
声?なんの話?

「最初は、っていうか会長として普段見てた雪音はもっとハキハキした聞き取りやすいクリアな声で喋ってんの。でも最近、俺と話す時はリラックスした声になってる」

え、嘘
そんな変わる?

「微妙にだけど。その声知ってるのが俺だけだと思うとなんか」



「ちょっといい気分だね」

ニッと片方の口角を上げて少し目を細くする





「楓くんは、思ったより表情豊かだって知ってました?」

「え?」

「最初は、というかあなたとこういう関係になる前はもっと機械的で何に対しても無関心無表情だったんですよ。でも最近、私と一緒にいる時はよく表情が変わるんです」

「まじ?」

うん

「それを知ってるのが私だけだと思うと、少し気分いいですね」


おんなじように言っておんなじような顔をしてやった


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