偽恋人の恋愛事情
ーーー

2年前



…最悪

マジでなんなんだよ

俺が何したってんだよ

ただ、必死で練習して、その成果が実をつけてスタメンに選ばれただけなのに


先輩が怖いからって同級生も何もしてくれないし

先生もテキトーだし…

ああくそ

意味わかんねぇ


イライラしながら鼻を押さえて保健室の扉を叩く

「失礼します」

苛立ちの口調のまま、少し乱暴にドアを開ける



「どうしました?」


…うわ

そこにいたのは肩まで伸びた真っ黒の髪と
雪みたいな白い肌をした女子生徒だった


……めっちゃ、綺麗な人


「…」

「…?あの?」

え、あ

「あ、すみません、えーと先生は?」

「今会議中です。保健委員の私が代理です」

あー保健委員の人


「鼻血ですか」

「あーはい」

「ちょっと待ってください、あ、上向いてて」

「うす」


その見惚れるほど綺麗な人はテキパキと道具を出している

こんな人いたっけ…

ブレザーの刺繍の色が一緒だから同学年か



「ボールですか」

「あーいや…転けたっていうか」

「大変ですね運動部も」

まあ…そうっすね

「あ、足もやってますね」

え?

見下ろすと左足が擦りむいていた

うーわまじか


「手当するので、鼻押さえててください」

「ありがとうございます」


…綺麗な人だ

真っ白な手が俺の傷口に近づく

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