完璧からはほど遠い
慌てて手のひらで涙を拭っても、次から次へと零れた。ごまかしきれそうにない量だった。涙を何とかしても、濡れたまつ毛や赤くなった目はどうしようもないだろう。
すぐにリビングから成瀬さんが戻ってきた。そして案の定、私の顔を見てぎょっとする。彼は駆け足で寄り、私にしどろもどろ尋ねた。
「ど、どうした、なんかあった? なん、え、どうした!?」
「いえ、大丈夫、です」
「いやいや全然大丈夫じゃなさそう!」
「個人的なことなので。容器ありがとうございました」
早くここから立ち去りたくて、彼の手から空っぽの容器を取る。だが、離さなかったのは向こうだ。がっちり持ったまま動かない。まるで奪い合うように、容器を引っ張っては戻され、引っ張っては戻されを繰り返した。
どうしていいか分からず困っていると、突然手首を掴まれた。そしてやや強引な力で、玄関の中に引っ張られる。よろけながら中に入った私を支えつつ、彼は玄関の扉を閉めた。鍵までしっかりかけると、ぐるりと振り返る。間抜けみたいにタッパーを握りしめた私の両肩に手を置くと、成瀬さんは真剣なまなざしで言った。
「まだ帰さない」
「…………あの」
「佐伯さんは俺に伝えなきゃいけないことがあったでしょ? 俺もあるって言ったはず。まだお互い何も言ってない」
口を噤んだ。
あった、あったけど、それはもう言える勇気がない。
ただ、彼が手を置いている肩が燃えるように熱い。
「その、もう言わなくても大丈夫になったといいますか」
「なんで? ちゃんと言ってよ、佐伯さんの口から」
「いえ、今は」
「俺のこと気にしてる? 大丈夫、ちゃんと受け止めるから」
なにそれ、私が告白しようとしてるの、気が付いてるんだろうか?
だとしたらなんて酷な人なんだ。いわせて振るつもりか?
すぐにリビングから成瀬さんが戻ってきた。そして案の定、私の顔を見てぎょっとする。彼は駆け足で寄り、私にしどろもどろ尋ねた。
「ど、どうした、なんかあった? なん、え、どうした!?」
「いえ、大丈夫、です」
「いやいや全然大丈夫じゃなさそう!」
「個人的なことなので。容器ありがとうございました」
早くここから立ち去りたくて、彼の手から空っぽの容器を取る。だが、離さなかったのは向こうだ。がっちり持ったまま動かない。まるで奪い合うように、容器を引っ張っては戻され、引っ張っては戻されを繰り返した。
どうしていいか分からず困っていると、突然手首を掴まれた。そしてやや強引な力で、玄関の中に引っ張られる。よろけながら中に入った私を支えつつ、彼は玄関の扉を閉めた。鍵までしっかりかけると、ぐるりと振り返る。間抜けみたいにタッパーを握りしめた私の両肩に手を置くと、成瀬さんは真剣なまなざしで言った。
「まだ帰さない」
「…………あの」
「佐伯さんは俺に伝えなきゃいけないことがあったでしょ? 俺もあるって言ったはず。まだお互い何も言ってない」
口を噤んだ。
あった、あったけど、それはもう言える勇気がない。
ただ、彼が手を置いている肩が燃えるように熱い。
「その、もう言わなくても大丈夫になったといいますか」
「なんで? ちゃんと言ってよ、佐伯さんの口から」
「いえ、今は」
「俺のこと気にしてる? 大丈夫、ちゃんと受け止めるから」
なにそれ、私が告白しようとしてるの、気が付いてるんだろうか?
だとしたらなんて酷な人なんだ。いわせて振るつもりか?