完璧からはほど遠い
 私は成瀬さんを見上げて睨んだ。

「私は別に大丈夫です!」

「いや大丈夫って何が!」

「もう解決したってことです!」

「解決? まず問題を教えてよ」

「それが言えるなら困ってません!」

「ほら困ってるんじゃん、どうしたの!」

「どうもないです、先に成瀬さんからどうぞ!」

「分かった! 佐伯さん好きです!」

「分かりました! わた、 
 ん???」

 

 二度見した。



 ついに自分の耳が狂ったらしい。

 えげつない聞き間違いをしたようだ、ちゃんと働きなさい、私の耳。

「はい、なんですか?」

「え、うそ聞こえなかった? 俺結構大声で叫んだよ」

「はあ」

「好きだって!」

「ん??」

 首を傾げるしか出来なかった。喜ぶより、疑うより、驚くより、理解が追いついていなかった。頭が働くのをさぼっているみたいだ。
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