完璧からはほど遠い
 成瀬さんはそんな私を見て笑いながら、再びパソコンを手に取る。

「急だったしね。途中で止められる自信は全くないので、今日は申し訳ないけどこのまま寝ましょう」

 そう言われ、私は勢いよく立ち上がった。恥ずかしいのと、でもどこか嬉しい気持ちでごっちゃになりながら、私は深々と頭を下げた。

「おやすみなさいませ!」

「おやすみ、また明日ね」

 ひらひらと手を振った成瀬さんに背を向け、私は寝室へ移動した。これ以上恥をかくのはごめんだ、あまりちゃんと考えていなかったのは私の方だった。

 慌てて寝室の扉を閉め、振り返ってベッドを見た。ほかに何も物がない閑散とした部屋だ。以前熱を出した成瀬さんをここで看病して以来、あまり入ることはなかった。

 朝抜けてきたであろうそのままの形で、布団が捲れていた。それがやけに自分の心をくすぐった。一度深呼吸をしてから、ベッドに体を乗せ布団に包まる。ふわっと成瀬さんの香りがして、こんなんじゃ私も眠れるわけない、と思った。

 あの成瀬さんと、両想いだった。

 信じられないけど多分、夢じゃない。

 幸せすぎて、もう何も考えられなかった。色々悲しいことも悔しいこともあったけど、全て吹っ飛ばせる、この布団にはそんな威力があるのだ。



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