完璧からはほど遠い
翌朝起きると、なんと成瀬さんはすでに起きて出かける準備をしていた。どうしても行きたいところがあるが一人がいいと思うので、私は家で待っててほしいと言われた。反対なんて出来るわけがなく、私は素直に頷いて留守番をした。家に誰か来ても絶対開けちゃダメ、なんて子供への躾みたいなことを散々言って、成瀬さんは出て行った。
家はどこでも見ていい、と言われていたため、とりあえずキッチン周辺を漁って朝ごはんを食べる。とはいえロクなものがない成瀬宅なので、カロリーメイトになった。まあ、たまに食べると美味しいよね。
それから身支度を整えて、テレビを見たり、ちょっと掃除したりしてみた。早く帰ってこないかなあ、なんて時計をチラチラ見ていたが、昼をすぎても中々帰ってこなかった。少ししてラインが入る、『まだ帰れそうにない、ご飯は宅配とか頼んで!』らしい。
届けてもらおうかとも思ったが、面倒だったのでまだ冷凍庫に眠ってるご飯を取り出して温めて食べた。一人で広々とした部屋の床で食べながら、成瀬さんは今一体どこに行ってるんだろう、とぼんやり思う。
疑問には思うけど別に深く追及したいとは思わなかった。昨日あれだけ真っすぐ気持ちを伝えてくれたため、今現在心が満たされているからだ。寝る前だって……いけないいけない、思い出すと恥ずかしくて赤面しちゃう。
ソファの上でテレビを見るだけの一日が過ぎ去り、まるで成瀬さんだと一人で笑っていたら、夕方を過ぎてようやく彼は帰宅した。外はもう暗くなっている頃だ。両手にビニール袋をぶら下げてリビングに入ってきたのを、私は飛び跳ねて迎えた。
「おかえりなさい!」
飼い主が帰ってきた犬のような反応をしてしまったと自覚していた。成瀬さんを犬っぽいと思ったことは何度もあったが、今回は自分がその立場だ。
私を見てにこりと笑った。持っていた袋を床にどさりと置き、彼は肩を回した。
「ただいまー思ったより時間かかっちゃったなーごめんね」