完璧からはほど遠い
「おーお待たせして申し訳ない」
「おはようございます、佐川部長」
「もう少ししたら来ると思うよ」
ややお腹の出た男性は佐川部長、私たち……ではなく、大和の上司だ。私は頭を下げて挨拶をする。
「おはようございます」
「ああ、君か。いやいや、今からもう一度詳しく話は聞くつもりだが、本当なら大変だったね」
労わりの言葉をくれる相手にほっとした。優しそうに下がった目じり、気のよさそうな笑い顔。いい人そうだなと直感的に思ったのだ。
佐川部長は近くにあった一つの席に腰かけた。腕を組んで渋い顔をする。
「正直富田さんは明るくて人の中心にいるようなタイプだから、成瀬さんから連絡を貰った時は驚いた」
「休みの日に連絡してしまい申し訳ありませんでした」
「いやいや、構わないよ急ぐことだからね」
「はい、今回の言動はあまりに大きな問題だったので、僕一人の力ではなんとも」
そう成瀬さんが言いかけたとき、ノックの音がした。三人の視線が一気に扉に集まる。そして開かれたそこに立っていたのは、やはりというか大和だった。佐川部長が呼び出してくれたのだ。
大和は私たちを見ると驚きで少し後ずさった。だがすぐに姿勢を正し、中へ入ってくる。私と成瀬さんを見、じっと不快な視線をぶつけてくる。
「おはようございます」
「あー呼び出して悪いね、まあそこ座って」
大和は佐川部長の正面にある席に腰かけた。変わった顔ぶれに、彼はややおどつきながら、ちらちらと私の方を見ている。佐川部長が笑顔で言った。
「一緒に聞いてほしい話がある」
「はい?」
「君がうちの社員の一人である、佐伯さんに迷惑行為をしているという件で」
分かりやすく大和の顔が青くなった。すかさず成瀬さんが近づき、にこやかに笑いかける。
「お話するのは初めてですね? 富田大和さん、成瀬慶一と言います」
余裕綽々な成瀬さんを見上げながら、大和はごくりと唾を飲み込んで返事を返した。
「ああ、どうも。名前は存じ上げています、でもあなたがなぜここに」
「彼女と現在お付き合いをさせてもらってるので、やはりここは僕も同席したいと思いまして」
「はあ!?」
大和がひっくり返った声で言った。そんなに信じられない組み合わせだろうか、と苦笑する。まあ確かに、私だって成就するとは思ってなかったけどさ……。
「いや待ってください、なんであなたが志乃と? そんなわけ」
「あるんですよ。僕はずっと彼女に片思いしてたので」
「……はあ?」
「時間が勿体ないので簡潔に行きます。
あなたが佐伯さんに行っているストーカー行為、即刻やめてください」
冷たい声が響く。大和はその声色に一瞬顔を凍らせながらも、すぐに笑ってすっとぼけた。
「ストーカーって、大げさな……何を言ってるんですか、俺はそんなこと」
「一つ目。ありもしない噂を流す。
佐伯さんの同期たちに結婚するなんて妄想めいた噂を流すのはやめて頂きたい」
「あ、ああ、あれは……いや、嘘をついたわけじゃない、そうなるかも、って願望みたいな」
「おはようございます、佐川部長」
「もう少ししたら来ると思うよ」
ややお腹の出た男性は佐川部長、私たち……ではなく、大和の上司だ。私は頭を下げて挨拶をする。
「おはようございます」
「ああ、君か。いやいや、今からもう一度詳しく話は聞くつもりだが、本当なら大変だったね」
労わりの言葉をくれる相手にほっとした。優しそうに下がった目じり、気のよさそうな笑い顔。いい人そうだなと直感的に思ったのだ。
佐川部長は近くにあった一つの席に腰かけた。腕を組んで渋い顔をする。
「正直富田さんは明るくて人の中心にいるようなタイプだから、成瀬さんから連絡を貰った時は驚いた」
「休みの日に連絡してしまい申し訳ありませんでした」
「いやいや、構わないよ急ぐことだからね」
「はい、今回の言動はあまりに大きな問題だったので、僕一人の力ではなんとも」
そう成瀬さんが言いかけたとき、ノックの音がした。三人の視線が一気に扉に集まる。そして開かれたそこに立っていたのは、やはりというか大和だった。佐川部長が呼び出してくれたのだ。
大和は私たちを見ると驚きで少し後ずさった。だがすぐに姿勢を正し、中へ入ってくる。私と成瀬さんを見、じっと不快な視線をぶつけてくる。
「おはようございます」
「あー呼び出して悪いね、まあそこ座って」
大和は佐川部長の正面にある席に腰かけた。変わった顔ぶれに、彼はややおどつきながら、ちらちらと私の方を見ている。佐川部長が笑顔で言った。
「一緒に聞いてほしい話がある」
「はい?」
「君がうちの社員の一人である、佐伯さんに迷惑行為をしているという件で」
分かりやすく大和の顔が青くなった。すかさず成瀬さんが近づき、にこやかに笑いかける。
「お話するのは初めてですね? 富田大和さん、成瀬慶一と言います」
余裕綽々な成瀬さんを見上げながら、大和はごくりと唾を飲み込んで返事を返した。
「ああ、どうも。名前は存じ上げています、でもあなたがなぜここに」
「彼女と現在お付き合いをさせてもらってるので、やはりここは僕も同席したいと思いまして」
「はあ!?」
大和がひっくり返った声で言った。そんなに信じられない組み合わせだろうか、と苦笑する。まあ確かに、私だって成就するとは思ってなかったけどさ……。
「いや待ってください、なんであなたが志乃と? そんなわけ」
「あるんですよ。僕はずっと彼女に片思いしてたので」
「……はあ?」
「時間が勿体ないので簡潔に行きます。
あなたが佐伯さんに行っているストーカー行為、即刻やめてください」
冷たい声が響く。大和はその声色に一瞬顔を凍らせながらも、すぐに笑ってすっとぼけた。
「ストーカーって、大げさな……何を言ってるんですか、俺はそんなこと」
「一つ目。ありもしない噂を流す。
佐伯さんの同期たちに結婚するなんて妄想めいた噂を流すのはやめて頂きたい」
「あ、ああ、あれは……いや、嘘をついたわけじゃない、そうなるかも、って願望みたいな」