完璧からはほど遠い
そんな真っすぐに褒められるとは想像もしておらず、私は小声でお礼を言いながら小さくなる。顔が熱い、あの成瀬さんにそう思われていたとは。どうせ私のことなんて顔と名前を知ってる、ぐらいの認識かと思っていたのに。今の成瀬さんは置いておいて、普段の彼は本当にすごい人なので嬉しくないわけがない。
あっという間に完食した成瀬さんは、満足げに手を合わせた。
「あー久しぶりにちゃんとした朝飯食べた。美味しかった」
「いつもはやっぱり栄養補助食品なんですか?」
「のときもあるけど、基本食べないかな。昼にちゃんと社食食うし、って思って」
「成人男性は昼一食ではカロリーが足りないと思いますが……」
「ご飯はおかわりしてるから」
そういう問題じゃない。私は呆れて成瀬さんを見た。
大丈夫なんだろうかこの人。絶対健康にはよくないよね。これまで若さで保ってきただろうけど、これから体調とか崩していくんじゃ……営業部のエースが倒れたら困る!
「あの。よければ私夕飯ぐらい作りましょうか?」
口からすっと出た。成瀬さんが目を丸くする。慌てて付け足した。
「あの、私の家すぐ近くじゃないですか。だからどうせ自分の分夕飯作るので、それをお渡しするくらい手間じゃないなあと思ったんです。あ、でも成瀬さんが迷惑でなければ、ですが……」
徐々に声が小さくなる。提案してから後悔した。あの成瀬さんに手作りの夕飯を持ってきます、なんて。気持ち悪いと思われたらどうしよう、下心があるわけじゃないけど、そう受け止められたら。
だが成瀬さんは、まるで犬のように目を輝かせて笑った。
「え、いいの!?」
「…………」
「いやー俺腹は減ってるんだよ。でも動くのがめんどくさいだけでさ、信頼できる人からご飯を貰えるならこんな嬉しいことないわ。毎日じゃなくていいから、たまに恵んでくれるとありがたい」
ニコニコして受け入れた成瀬さん。