完璧からはほど遠い

私たちの不思議な関係

「はい、こっちの果物も食べてくださいね!」

「お、苺だー」

「はあ、二日も食べないなんて……信じられません」

 私は呆れて言う。連休を挟んだので、成瀬さんに会うのはちょっと久しぶり。冷凍しておいた料理をしまっておいたのだが、たぶん温めるのが面倒でこの人はあまり食べてないみたいだ。

 成瀬さんと不思議な関係が始まって二週間。私は夕飯を作った日は彼の家に届けていた。預かった鍵で勝手に入っていい、と言われてるのでそうしてる。家に入ると、成瀬さんは大概ソファに寝そべって寝てるかテレビを見てるかだ。

 仕事場では、こんな関係を知ってる人はもちろん誰もいない。あの成瀬さんの合鍵持ってるだって? 女子社員に殺されるかもしれない。

「あーうまかった。あ、お金持っていってね」

「あの、前も言いましたが多いですよ」

「手間賃だよ。届けに来てくれてるんだし、宅配弁当頼んでるようなもんじゃん」

「宅配弁当頼めばいいのでは……?」

「注文するのと玄関まで行くのがめんどくさいよね」

(まじかよほんとこの人は)

 私が用意してきた大量のご飯はすべて食べつくした。普段あまり食事を取らないせいか、成瀬さんは食べるときに大量に食べる。私は数日分のつもりで持ってきた食料たちが、一度にお腹に収まってしまう。これはこれで体によくない気がするんだが。

 成瀬さんは丁寧にごちそうさまの挨拶をすると、背後にあるソファにもたれかかった。私は呆れて言う。

「ところでテーブル買いませんか、床でご飯って」

「テーブルねーほしいんだけどね。買いに行くのが面倒で……ネットで買うにもサイズ測るのが面倒で、いつのまにか後回し」

「想像通りの答えです」

「食べるときにあったほうがいいな、というのは痛感してる。佐伯さんは最近引っ越したんだっけ?」
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