完璧からはほど遠い
最初は少したじろいだ。でもそのつど、成瀬さんが言ってくれた言葉を思い出して平然を努めた。高橋さんは、大和と付き合うからもう首を突っ込むな、と言いたいのだろう。言わなくても、あんな浮気男くれてやるというのに。それとも、『大和を返して!』と私が泣きわめくのを期待していたんだろうか。
もう今はほとんど気にしないぐらいまで来ていた。そう、成瀬さんのご飯係が忙しくてそれどころじゃない。
彼はふうん、と頷く。
「佐伯さんが引きずってないならいいことだ。最近さらに仕事もやる気で評判だよ」
「え、そ、そんな」
「ほんとに。頑張ってるね」
そう微笑んでくれる成瀬さんを見て、胸がむずがゆくなった。あの成瀬さんに褒められるなんて、こんな嬉しいことはない。プライベートは別として、仕事中は本当に憧れるんだから。
「ありがとうございます……」
「飯も上手いし! 食いすぎた」
「一度にじゃなくてちゃんと三食、いやせめて二食まともに食べれませんか?」
「できたらいいんだけどなぁ。てか、満腹でヤバい、眠気が」
成瀬さんはずるずるとソファによじのぼり、そのまま気持ちよさそうに寝息を立て始めた。この間約15秒。漫画のような寝つきの良さ。
私は少し笑いながら片付ける。ほんと成瀬さん、職場とイメージ違いすぎ。
翌日、同期の沙織からラインが来た。入社時から仲良くしている友達の一人だ。ランチに行くぞ、と一文だけ書いてあり、その文面を見てなんとなく察した。
私と大和が付き合ってたことは、沙織ももちろん知ってる。別れたことがどこかから耳に入ったのだろう。
しまったな、と顔を歪める。沙織にはちゃんと私の口から言いたかったのに。そのうち改まって話そうと思っていたら、なかなかタイミングがなく二週間もすぎてしまった。沙織が目を吊り上げて怒る様子が目に浮かぶ。
その後大和とは同じ会社にいながらも、運良く顔を合わせることはなかった。会うのは気まずいからそれでいいのだが。後藤さんは相変わらず意味の分からないアピールをしてくる。もう分かったからやめてくれ、と言いたいが、言うのも癪なのでどこまで続くのか見守っているところだ。
その日昼休憩になると、待ち合わせていた会社近くのカフェに入った。先に入っていた沙織はメニューを眺めながら私を待っている。その正面に駆け寄った。
「お待たせ! 早かっ」
もう今はほとんど気にしないぐらいまで来ていた。そう、成瀬さんのご飯係が忙しくてそれどころじゃない。
彼はふうん、と頷く。
「佐伯さんが引きずってないならいいことだ。最近さらに仕事もやる気で評判だよ」
「え、そ、そんな」
「ほんとに。頑張ってるね」
そう微笑んでくれる成瀬さんを見て、胸がむずがゆくなった。あの成瀬さんに褒められるなんて、こんな嬉しいことはない。プライベートは別として、仕事中は本当に憧れるんだから。
「ありがとうございます……」
「飯も上手いし! 食いすぎた」
「一度にじゃなくてちゃんと三食、いやせめて二食まともに食べれませんか?」
「できたらいいんだけどなぁ。てか、満腹でヤバい、眠気が」
成瀬さんはずるずるとソファによじのぼり、そのまま気持ちよさそうに寝息を立て始めた。この間約15秒。漫画のような寝つきの良さ。
私は少し笑いながら片付ける。ほんと成瀬さん、職場とイメージ違いすぎ。
翌日、同期の沙織からラインが来た。入社時から仲良くしている友達の一人だ。ランチに行くぞ、と一文だけ書いてあり、その文面を見てなんとなく察した。
私と大和が付き合ってたことは、沙織ももちろん知ってる。別れたことがどこかから耳に入ったのだろう。
しまったな、と顔を歪める。沙織にはちゃんと私の口から言いたかったのに。そのうち改まって話そうと思っていたら、なかなかタイミングがなく二週間もすぎてしまった。沙織が目を吊り上げて怒る様子が目に浮かぶ。
その後大和とは同じ会社にいながらも、運良く顔を合わせることはなかった。会うのは気まずいからそれでいいのだが。後藤さんは相変わらず意味の分からないアピールをしてくる。もう分かったからやめてくれ、と言いたいが、言うのも癪なのでどこまで続くのか見守っているところだ。
その日昼休憩になると、待ち合わせていた会社近くのカフェに入った。先に入っていた沙織はメニューを眺めながら私を待っている。その正面に駆け寄った。
「お待たせ! 早かっ」