完璧からはほど遠い
普段の成瀬さんならともかく、あの横になったら動けない様子を見ていたんじゃ、恋なんて芽生えない。尊敬する先輩に変わりはないが、恋とは違う。
だってあんなタイプ、好きになったら絶対苦労する。食事すらまともに取れない人が彼女を大事に出来るの? デートとかどうするの?
どこか納得してない様子だが、沙織はふうんと頷いた。
「まあ、志乃が落ち込んでないならなんでもいいんだよ。まあ、その人の言うことは正しいしいいこと言うよね。確かに、志乃が充実した生活を送るのが一番向こうにダメージ行く気がするよ。志乃にとってもいいことだしね」
「うん。まだ完全に立ち直ってるとはいえないけど、大分落ち着いてるよ」
「しかしその後輩さあ、志乃の彼氏って知ってて略奪したのかね? 知ってると知らないじゃ大きな違いがあるよねー」
「うーん。なんか言いたそうにしてる気はするけど、私はもう仕事以外では一切関わりたくないからスルーしてる」
「それが一番だね。ああむかつく。もし元々は知らなかったとしてもさあ、鉢合わせたときには知ったわけじゃん? そのあとも付き合ってますアピールとかどんな神経してんの!」
私は苦笑いをした。同感だよ、本当なら口も利きたくない。でも指導係としてちゃんとせねばならないから頑張ってるだけだ。
高橋さん、今何をどう思ってるんだろうなあ。
沙織が目撃した情報から見るにやっぱり大和とは上手く行ってるみたいだし、私を敵視しなくていいと思うんだけど。
「ってやば、食べなきゃ昼休憩終わるって」
「ほんとだ、食べよう食べよう」
私たちは慌てて目の前のパスタを食べ始めた。