完璧からはほど遠い




 慌てて仕事場に戻る。まだ仕事は山積みなのだ、また午後から必死に踏ん張るか。そう思い中に入った時、何やらオフィス内が賑やかだった。ちらりと見てみれば、上司と成瀬さんが何やら話している。上司はにっこにこで、成瀬さんの肩に手を置いていた。

 それを横目で見ながら、何事だろうと疑問に思う。席に座ると、隣に座っていた今泉さんに声をかけてみた。今泉さんは私より一つ年上の女の先輩で、さばさばした性格が面白い人だ。席が隣ということもあり、よく話したりしている。

「今泉さん、何事ですか?」

 声を潜めて尋ねてみると、彼女は視線を成瀬さんたちに向けたまま言った。

「また成瀬さんが凄い契約取ってきたらしいよー」

「はーあ。さすがですねえ」

 私は感嘆のため息を漏らして成瀬さんを見た。

 ピシッとスーツを着こなし、髪もしっかりセットされている。堂々とした立ち振る舞い、余裕のある表情。はあ、あれが家ではソファから起き上がれないんだもんな。

 今泉さんは言う。

「あの人ってさあ、欠点あるのかね。顔よし、スタイルよし、仕事はできるし性格もいい。神は二物を与えずっていうけど嘘だよね、完璧じゃん。彼女いないみたいだけど不思議でしょうがないなー理想めっちゃ高いとかかな?」

 それを聞いた自分は、ぐっと言葉に詰まった。
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