完璧からはほど遠い
 私は絶句した。もう大和とやり直す気はないと、きっぱり言ったはず。元々はあっちが浮気して別れた、それが許せないと理由だって言った。

 なのになぜこの人はまだこんなことを言っている? ヨリを戻すよりさらにぶっ飛んでるじゃないか。

「……な、何を言ってるの?」

「これが俺の気持ち。分かってもらえたかな」

「いやいや全然分かんないから。なんでこんなことに」

「志乃が俺をとても想ってくれてるっていうのはよく分かった」

「はあ?」

「この前言ってただろ、好きだから許せなかったって。それ聞いて納得したんだよ、それだけ志乃は俺のことを想ってくれてたんだって」

 そりゃそんなことも言ったけども。

「いや、だから」

「それに……あいつと揉めた、って聞いた。俺のことでしょ?」

 あ、と思い出す。高橋さんとひと悶着あったことが、大和の耳にも入っていたらしい。首を強く振って否定した。

「揉めたけどそれは大和全然関係ないから! ほんとに! あの子が意味わからないこと言ったから私が怒っちゃっただけで」

「どんなこと?」

「だから、えっと、大和を返した、みたいな」

「ほら俺のことじゃん」

 嬉しそうに笑う。喜ぶところじゃない、私は言葉をつづけた。

「勘違いしないで、大和を返して、って言ったわけじゃないの! 返しましたって言われたから、いらないって言っただけ」

「志乃。志乃はもう少し素直になるべきだと思う。俺はたくさん考えて素直になったよ。志乃がどれほどいい彼女だったか思い知らされた。あいつは流れで付き合ったけど、自立してないっていうか、なんでも俺と同じもの買ってきたりして」

(それお揃いにしたかったっていうより、私に匂わせるために買ったんじゃ……)
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