完璧からはほど遠い
リビングには本当に物がなかった。テレビとソファだけが見える。でもそのほか生活感らしきものが見当たらない。待て、テーブルというものも何もないぞ、どこでご飯食べてるんだ?
首を傾げつつキッチンにお邪魔する。冷蔵庫を開けて、これまた唖然とした。
ない。
なんにもない。
水しかない。ほか食物、調味料といったものが何一つない! 電気代の無駄!!
「え……? さ、さすがにこれ、男の人と言えども……」
しかもあの完璧人間と言われる成瀬さんが? 料理とかもさらっと作ってしまいそうな成瀬さんが? というか可愛い彼女とか何人いてもおかしくなさそうな成瀬さんが??
冷蔵庫からピーピーと警告音が響いてハッとする。とりあえず水を取り出した。
それをもって寝室に戻ってみると、服を脱ぎ捨てたままの成瀬さんがベッドに寝ていた。なんと、服着てないではないか。下着姿のままです、ご馳走様でした。
「わわ、な、成瀬さん!」
慌てて体の上に布団を掛けて隠す。が、その体が震えていることに気が付いた。新しい服なんか出す余裕もないぐらい、熱が上がってるらしい。触ってみると確かに、これはまずい。
「成瀬さん、体温計とか、薬とかどこにありますか!?」
私が尋ねると、彼は苦しそうに顔をゆがめながら言った。
「……ない」
「え?」
やはり引っ越ししたてだろうか。荷物も運びこんでないとか? 一人暮らし始めたばっかりとか。なるほど、それなら頷ける。
仕方なしに、とりあえず水を少し飲ませると、私はマンションから飛び出して一目散に走りだした。目指したのは薬局ではなく、自分のアパートだった。
今まで気づかなかったが成瀬さんのマンションとうちは近い。私の家には薬や食べ物など常備してある。食材もあるので、薬を飲む前に何か少しでも胃に入れるものも用意できる。そう思い、自分のアパートを目指すことにしたのだ。
自室に駆け込み、とりあえず袋に必要と思われるものを放り入れた。解熱剤、風邪薬、体温計に冷えピタ。ゼリーにポカリ、それから冷蔵庫から適当な野菜を放り込んで短時間で雑炊を作り、タッパーに小分けした。ほんの数十分でそれを行うと、私は再び成瀬さんの家に走った。
息を乱しつつマンションに戻ってみると、今だ成瀬さんは真っ赤な顔をしてベッドで死にかけている。持ってきた体温計を突っ込んでみると、なんと四十度あり、こりゃ相当辛いと眉をひそめた。
「成瀬さん! ポカリ、ポカリ飲みましょう!」
それでも私の声は届いているようだった。支えると彼は体を起こしちゃんと水分を取った。このタイミングを逃してたまるかと、その口に作ってきた食事も放り込んでみた。数口何とか飲めたので解熱剤も投入。そのままベッドに横になると、成瀬さんは唸りながら寝入った。
無事眠り込んだのを確認し、ふうと息を吐く。目まぐるしい展開だった、あの成瀬さんを看病する日がくるなんて思ってもみなかった。普段あれだけしっかりしてる人でも、やっぱり四十度の熱出すと別人みたいになるんだなあ。
首を傾げつつキッチンにお邪魔する。冷蔵庫を開けて、これまた唖然とした。
ない。
なんにもない。
水しかない。ほか食物、調味料といったものが何一つない! 電気代の無駄!!
「え……? さ、さすがにこれ、男の人と言えども……」
しかもあの完璧人間と言われる成瀬さんが? 料理とかもさらっと作ってしまいそうな成瀬さんが? というか可愛い彼女とか何人いてもおかしくなさそうな成瀬さんが??
冷蔵庫からピーピーと警告音が響いてハッとする。とりあえず水を取り出した。
それをもって寝室に戻ってみると、服を脱ぎ捨てたままの成瀬さんがベッドに寝ていた。なんと、服着てないではないか。下着姿のままです、ご馳走様でした。
「わわ、な、成瀬さん!」
慌てて体の上に布団を掛けて隠す。が、その体が震えていることに気が付いた。新しい服なんか出す余裕もないぐらい、熱が上がってるらしい。触ってみると確かに、これはまずい。
「成瀬さん、体温計とか、薬とかどこにありますか!?」
私が尋ねると、彼は苦しそうに顔をゆがめながら言った。
「……ない」
「え?」
やはり引っ越ししたてだろうか。荷物も運びこんでないとか? 一人暮らし始めたばっかりとか。なるほど、それなら頷ける。
仕方なしに、とりあえず水を少し飲ませると、私はマンションから飛び出して一目散に走りだした。目指したのは薬局ではなく、自分のアパートだった。
今まで気づかなかったが成瀬さんのマンションとうちは近い。私の家には薬や食べ物など常備してある。食材もあるので、薬を飲む前に何か少しでも胃に入れるものも用意できる。そう思い、自分のアパートを目指すことにしたのだ。
自室に駆け込み、とりあえず袋に必要と思われるものを放り入れた。解熱剤、風邪薬、体温計に冷えピタ。ゼリーにポカリ、それから冷蔵庫から適当な野菜を放り込んで短時間で雑炊を作り、タッパーに小分けした。ほんの数十分でそれを行うと、私は再び成瀬さんの家に走った。
息を乱しつつマンションに戻ってみると、今だ成瀬さんは真っ赤な顔をしてベッドで死にかけている。持ってきた体温計を突っ込んでみると、なんと四十度あり、こりゃ相当辛いと眉をひそめた。
「成瀬さん! ポカリ、ポカリ飲みましょう!」
それでも私の声は届いているようだった。支えると彼は体を起こしちゃんと水分を取った。このタイミングを逃してたまるかと、その口に作ってきた食事も放り込んでみた。数口何とか飲めたので解熱剤も投入。そのままベッドに横になると、成瀬さんは唸りながら寝入った。
無事眠り込んだのを確認し、ふうと息を吐く。目まぐるしい展開だった、あの成瀬さんを看病する日がくるなんて思ってもみなかった。普段あれだけしっかりしてる人でも、やっぱり四十度の熱出すと別人みたいになるんだなあ。