完璧からはほど遠い
「やたら高い店に行こうとするし、ほんとうんざりだ。いいのは顔だけだった。これからは絶対志乃を裏切らないよ、俺と結婚してほしい!」

「だからさあ……」

 私は頭を抱える。指輪をもってこちらをギラギラした目で見てくる大和に、恐怖すら感じた。大和ってこんな人だったっけ? いつもノリがよくて明るいスポーツマンのイメージだったのに、まるで違う。どっかにイッちゃってるみたい。

 ここで甘えを見せてはだめだ。私は真っすぐ彼を見て言った。

「いい? 何度でも言う。
 私は大和とヨリを戻す気はない。結婚する気もない。もう大和を好きじゃない」

 一言ずつ噛みしめるように言う。大和は表情を変えなかった。指輪を差し出したままじっと止まっている。

「だから帰って。もう来ないで」

「そんなの嘘だろ? 強がるなよいい加減。俺を好きだから浮気を怒ったっていうのはよく分かったから。もう二度としないし、志乃を一番に想うから」

「強がってるわけじゃないって!」

「強がってるんだよ! そんな女は可愛げがないぞ、俺が下手に出てる間に素直になった方がいい」

「他に好きな人がいるの!」

 つい叫んでしまった。言うつもりなどなかったのに。大和は完全に一時停止してしまっている。

 言ってしまったものは仕方ない。私は彼から視線をそらして言った。
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