完璧からはほど遠い
その日は沙織の家に泊まり、夜中まで愚痴大会になり大いに語りつくした。
翌日、午前中は休みを取ることにし、自分の部屋に荷物を取りに行った。大和は仕事なのでいないだろうという考えだ。案の定、彼はいなかった。
しばらくは沙織の部屋で過ごすことが決まったので、もろもろ必要なものを一式揃え、沙織の家に置かせてもらった。そして私はその足で出社したのだ。今日は一日休んで物件を探したら、とも言われたのだが、どうしても仕事でやっておきたいことがあったので、そのために出社した。こんな時に仕事なんて、と沙織には苦言を言われたが、やりたくてやっているので仕方ない。
しなければならないことがたくさんある。今日は早く切り上げて帰ろう。物件探しだって、成瀬さんに告白をするのだって、これから頑張らねばいけないことだらけなのだ。
私は必死に仕事をこなして駆け回っていた。外回りを終え、会社に帰ってきたとき、もう日が赤くなっていた。早く切り上げようと思っていたのに、計画よりだいぶ遅れてしまった。私は足早に部署を目指す。
帰るのは沙織の家だけど、成瀬さんとも話したいし、一度彼の家に行かなければ。私の家からも近いから、大和と鉢合わせたりしないように気を付けなきゃいけないな。そうだ、沙織に防犯グッズを買っておけって言われたんだ、帰りにホームセンターに寄ってみよう。
そんなことを考えながら急いでいると、ある曲がり角で豪快に誰かとぶつかった。体前面に痛みを覚え、つい後ろによろめく。そして持っていた荷物を手から離してしまった。
「すみません!」
反射的にそう謝り顔を上げた瞬間、私の呼吸は一旦停止した。
「ごめん、大丈夫?」
成瀬さんが立っていた。