【WEB版(書籍化)】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました
 頼もしいイアンのおかげで、だいぶ冷静さを取り戻せた。

 私は、アシュレイ宛に早馬を出すよう執事に頼み、さらにクラーク邸の警備を強化するよう門番や守衛に注意喚起した。
 
 脅迫文は私宛に届いたが、犯人の目的が本当に私だけとは限らない。

 アシュレイの婚約者として、この屋敷の人々とイアンを何としてでも守り抜かなきゃ。

 怯えて、狼狽えている暇なんてないわ。
 しっかりしろ、私――!
 
 ひと通りの防衛策を講じると、疲れがどっと押し寄せてきた。

 ぐったりとソファに座り込む私を見て、イアンはいよいよ具合が悪いと思ったらしい。

「具合の悪い人は寝なきゃダメです」

 可愛らしい顔に精一杯の怖い表情を貼り付けて、私をベッドに強引に寝かしつけた。
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