【WEB版(書籍化)】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました
 隣で袋の中身をのぞき込んでいたジェイクが、いよいよ分からないといった顔をする。

「隊長、屋敷に酒飲み妖怪でも住み着いたんですか?」
 
「いや、酒飲み妖怪って……。イアンの家庭教師をしてくれている女性が、酒が好きなんだ」

「へぇ……『ただの』家庭教師ねぇ……」

 にんまりとジェイクが微笑む。悪い顔だ。
 
 部下であり友人のこいつに、隠し事などするだけ無駄か……。

 
「ビクトリアさんは、家庭教師で、婚約者だ」

 照れ隠しに、わざと書類に目を落としつつ小声で言うと、ジェイクは一瞬だまりこみ……。

「かーっ、なんすかそのニヤけた顔! カノジョにぞっこんじゃないっすか! くそぉ~、ついに独身貴族だった隊長も独り身卒業かぁ~!俺を置いていかないで下さいよぉ~!!」

「ばっ、馬鹿。声がデカい!」
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