【完結】婚約破棄を望んだのに、なぜか愛で埋め尽くされそうです!


 彼は運ばれてきたアイスコーヒーに手を付けず、私を見つめてくる。

「私……ずっと考えてた。カオルと結婚したら、幸せになれるかもしれないって」

「じゃあ、なんで……」

 その後の言葉を吐き出すのに、少し時間がかかる。

「だって、私はあなたのこと好きじゃないのよ?」

 私は他に好きな人がいる。その人のことを想っているから、カオルと結婚は出来ない。

「そんなこと、分かってる」

 分かってるなら、尚更そんなこと出来ない。

「ミクに好きな人がいても、俺はいい」

「えっ……?」

 カオルは私を真っ直ぐに見つめ、「俺がミクを好きだから、それでいいだろ?」と私に告げる。

「カオル……」

 なんでカオルは、そんなことが言えるのだろう。カオルの片想いになってしまうのに、どうして?

「ミクに好きな男がいても、俺は構わない」

「カオ、ル……」

 私は好きな人がいる状態で、誰かと結婚なんてしたくない。普通ならそのはずだ。
 なのにカオルは、なんの躊躇(ためら)いもなく私にそんなことを口にする。
 カオルのことが、まるで分からない。

「俺ならミクを幸せに出来る自信がある。お前が好きだから」

「っ……」

 ……カオルは、本当に優しすぎる。
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