【完結】婚約破棄を望んだのに、なぜか愛で埋め尽くされそうです!


 カオルはそんな私を抱き寄せると、「そっか。そりゃあ辛いよな」と慰めてくれる。

「え……?」

「お前の好きな人と毎日家で会うなんて、それはしんどいよな。お前の好きな人だし」

 カオルの言葉を聞いた私は、思わず「べ、別にしんどくないしっ」と可愛げのない態度を取ってしまう。

「本当にしんどくないのか?」

 そう聞かれると、やはりしんどい気持ちになるのは確かだ。

「……しんどいです」

「素直でよろしい」

 頭をポンポンと撫でてくるカオルに、私は「ちょっと、髪、ぐちゃぐちゃになっちゃうよ……」と伝えるが、カオルは嬉しそうに微笑んでいる。

「ミクの気持ちを一番分かってるのは、俺しかいないだろ? 俺には弱音、吐いていいから。泣きたい時も受け止めてやるし、抱きしめてやるよ」

「……ん、ありがと」

「どういたしまして。 ま、俺はお前の婚約者様だからな」

 ちょっと上から目線なのがまた絶妙にムカつくけど、それもカオルの良い所だとは思う。

「ちなみに、婚約破棄はまだイケるの?」

 冗談でそう聞いたら「まさか。もう婚約破棄は受け付けないぞ」と笑顔でそう返された。

「なんだ、もう婚約破棄出来ないのか」

「当たり前だ」
< 27 / 60 >

この作品をシェア

pagetop