【完結】婚約破棄を望んだのに、なぜか愛で埋め尽くされそうです!
引っ越し準備を終えたのは、それから数日後のことだった。
実家を離れてこれから夫になる人と生活すること自体は不思議ではないけど、まだあまり実感がない。
「カオル……今日から、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、奥さん」
カオルとぎゅっと握手を交わす。
「これから毎日、たくさん愛を囁いてやるから覚悟しろよ?」
「そ、そんなに愛を囁かなくてもいいから!」
毎日愛を囁くとか、ちょっとそれは無理かも……!
「ミク、俺と結婚するって言ってくれて、ありがとう」
「う、うん」
「幸せな結婚生活にしよう、必ず」
幸せな、結婚生活……。幸せになれたらいいな。
「落ち着いたら、すぐにでも籍を入れよう」
「……うん、そうだね」
姉夫婦も幸せに暮らしてる今、私も幸せになることを望みたい。
「ミク、俺はミクのそばにいられることが本当に嬉しい。 正直ミクから婚約破棄したいと言われた時は、本当にショックだったけど」
「……ごめん」
「それでもミクは、婚約破棄撤回してくれただろ? その上で、俺と結婚することを決めてくれた。本当にありがとう」
感謝しないといけないのは、私の方だ。私の方こそ、カオルに感謝しなきゃ。