【完結】婚約破棄を望んだのに、なぜか愛で埋め尽くされそうです!


 カオルは嬉しそうに微笑みながら「ほんとは寂しいくせに」と、私の頬をツンツンする。

「……うるさい」

 そんな私の頭を撫でると、「ちゃんと早く帰ってくるよ。だから大人しく待ってろって」と言葉をくれる。

「べ、別に……待ってる訳じゃないもん」

「帰ったらちゃんと抱きしめてやるから」

 その、ちゃんとって言葉が妙に気になる……。

「べ、別に……そんなの、期待してないし」

 と言いつつ、カオルが私を抱きしめるのは日常なので、言ったところで意味はないのだ。

「ほんとに俺の妻は、素直じゃないね」

「うるさい。早く行きなよ」

「そうだった。 行ってくる」

 慌てて家を出るカオルの背中に「行ってらっしゃい」と声をかけると、再び朝ごはんを食べる。

「……はあ」

 カオルには、参った。 でも本当のことを言うと、カオルの優しさに救われているのは本当だ。
 カオルと一緒に生活してから、私の時間はすべてカオルのためだけにある。
 カオルという夫のために、私は妻としての役目を果たすだけだ。 私はカオルに愛されているということが、よく分かる。

 カオルとの結婚生活は、想像していた通りだった。 ずっとカオルは、私を楽しませてくれる。
< 39 / 60 >

この作品をシェア

pagetop