【完結】婚約破棄を望んだのに、なぜか愛で埋め尽くされそうです!
カオルは嬉しそうに微笑みながら「ほんとは寂しいくせに」と、私の頬をツンツンする。
「……うるさい」
そんな私の頭を撫でると、「ちゃんと早く帰ってくるよ。だから大人しく待ってろって」と言葉をくれる。
「べ、別に……待ってる訳じゃないもん」
「帰ったらちゃんと抱きしめてやるから」
その、ちゃんとって言葉が妙に気になる……。
「べ、別に……そんなの、期待してないし」
と言いつつ、カオルが私を抱きしめるのは日常なので、言ったところで意味はないのだ。
「ほんとに俺の妻は、素直じゃないね」
「うるさい。早く行きなよ」
「そうだった。 行ってくる」
慌てて家を出るカオルの背中に「行ってらっしゃい」と声をかけると、再び朝ごはんを食べる。
「……はあ」
カオルには、参った。 でも本当のことを言うと、カオルの優しさに救われているのは本当だ。
カオルと一緒に生活してから、私の時間はすべてカオルのためだけにある。
カオルという夫のために、私は妻としての役目を果たすだけだ。 私はカオルに愛されているということが、よく分かる。
カオルとの結婚生活は、想像していた通りだった。 ずっとカオルは、私を楽しませてくれる。