僕の欲しい君の薬指
率直に胸の内を打ち明けると、私も榛名さんと一緒に居たい気持ちがあった。友達と呼べる友達ができなかった自分の人生において、もしかすると榛名さんとは初めての友達になれるかもしれない。
だけどもし、もしも万が一、天糸君にこの事が露呈したらどうなってしまうだろうか。
天糸君に露呈して彼が憤慨した場合、まず初めに榛名さんとの関係を絶たれるのは火を見るよりも明らかだ。折角一緒に食事をする仲にまでなれたのに、榛名さんを失う。その結末を思案すればする程に恐怖心に呑み込まれる。
返答を寄越さない私に痺れを切らしたのか、榛名さんにぐいっと腕を引き寄せられた。
「きゃっ」
「時間切れな」
「え!?」
「答えられないって事は、少なくとも俺とのデートは嫌じゃないって事だろ?」
「……」
「月弓、赤くなってる」
「こ、これは暑さのせいです」
「ん、そうだな。今はそう云う事にしてやる」
フッと軽く笑い声を落とした相手の指先が私の輪郭を撫でる。温度が急上昇した頬に触れた榛名さんの体温は冷たくて、心地が良かった。