僕の欲しい君の薬指
「デートに出発して…「何処にそんな暇があると思ってるの?珠々?」」
横から唐突に飛び込んで来た声が榛名さんの言葉を叩き落とす様に遮った次の瞬間、引き裂くみたいに私の腕を掴んでいた榛名さんの手が第三者の手によって払われた。
反射的に動いた視線が急に出現した第三者の姿を捉えるよりも先に、「げっ、何でいんだよ」と放った榛名さんが頬を引き攣らせた。
「化け物に遭遇したみたいなリアクション辞めてくれる?失礼な奴」
何が起こっているのか把握できていない私を余所に、視界に割って入ってきた人物が不快に満ちた表情を浮かべた。
ど、どちら様ですか?
ベレー帽からチラリと微かに見える髪の毛が、とても綺麗な群青色に染まっている。掛けているサングラスが顔の二分の一を覆っているのではないかと思う程に小顔だし、気のせいか榛名さんと同じベルガモットの甘い香りが登場した彼から漂っている。
「いつも遅刻ギリギリだから僕が珠々を迎えに来てあげたんだよ、リーダーとしてね」
「余計なお世話だっての。てかどうやって俺の居場所分かった訳?綺夏《あやか》」
「GPS付けておいた」
「反則だろ」
「僕がルールだから反則も糞もないよ。第一、何女の子連れ回してんの。ていうか……」
“君、誰?”
くるりと振り返って私の方を向いた相手が、首を捻ってサングラスを軽く下げて、綺麗な双眸を覗かせた。