僕の欲しい君の薬指



お二人はどう云うご関係なのだろうか。会話の内容から察するに仕事仲間なのだろうけれど、私から見る二人はとても親しい関係に感じた。



妃良(きら) 綺夏(あやか)。これが僕の名前だから覚えてね」

「え…」

「月弓ちゃんとはまた会う気がするから教えておこうって思って。綺夏って呼んで良いよ」

「あの、また会うってどう云う意味で…「あ、もう時間だ。フルーツティー買って行こうと思ったのにショップに寄る時間が珠々のせいで無くなっちゃったじゃん」」



妃良さんが動く度に広がって私の鼻を掠める香りはやはり、榛名さんと同じそれだ。

怪訝な顔で「俺のせいにすんな」と零す榛名さんは、妃良さんが登場してからと云うものすっかり空気の流れを掌握されてしまっている。



「月弓ちゃん」



夏の暑さを紛らわしてくれる風鈴よりも涼し気で爽やかな声に名前を呼ばれてハッと我に返る。それから、声の主である妃良さんと自然に目が合った。

< 118 / 259 >

この作品をシェア

pagetop