僕の欲しい君の薬指
迫るこの子に対しいつまで経っても曖昧で、困惑したまま答えの一つも導き出せない自分が一番嫌いだ。
「ふふっ」
「ご機嫌だね」
「だって、可愛い月弓ちゃんが傍にいるんだもの。月弓ちゃんこそ、今夜は全然僕を拒絶しないね」
「えっと、それは…」
私だけを無条件に映す翡翠色の瞳に吸い込まれてしまいそうだった。自分でももうどうすれば良いのか分からなくなっている私の心を、まるでこの子は見透かしているかの様だ。
居た堪れなくなって視線を逸らす己が情けない。まだどんな表情をするのが正解なのか分からない。どう返事をすれば良いのかも、どんな風に行動するのが正しいのかも…それから自らの心も、私はまだ何も分からない。
ただ、天糸君と離れ離れで過ごしたこの二日間が、私の心に多少の変化をもたらしていると云う事だけは、明瞭な事実として目前にぶら下がっていた。