僕の欲しい君の薬指
もっと触って。もっと撫でて。そんな言葉達を投下する彼が幼い頃の彼の姿と重なって、こちらの母性本能を刺激する。
あの頃と違うのは、私達の触れ合いがより濃厚な物になったと云う点だ。そして、私の心にあの時にはなかった感情が間違いなく芽吹いていると云う点だ。
「檸檬紅茶の入ってるグラスを持ってたから、月弓ちゃんの指冷たい」
「逆に天糸君の頬は熱いね」
「月弓ちゃんが触れてるからだよ」
「え?」
「月弓ちゃんに触れられただけで、僕の身体はこんなに熱くなるの。ほら、もっと僕の熱を感じて?」
艶めいた笑みをそっと添える彼の不意打ちに心臓が痛くなる。芽吹いた感情がそのまま成長して葉を生やし、茎が伸びて蕾がついてしまいそうな予感がして思わず顔を顰める。
紅茶の温度を覚えていたはずの指先はあっという間に天糸君の体温で溶けてしまっていた。