僕の欲しい君の薬指
その場の何もかもを天糸君が掌握していた。一言で表すならば不気味。ケラケラと狂気的な笑い声を轟かせる彼と対峙している榛名さんは、怪訝な顔を崩さない。
「ぜーんぶお前だったんだね、珠々」
「何の事だよ」
「やっと月弓ちゃんが僕以外を視界に捕らえない環境ができたと思ったのに。もう少しで月弓ちゃんが永遠に僕に囚われるって所だったのに…」
「おいちょっと待て、お前さっきからずっと様子が変…「珠々が僕の計画を壊したんだよ。責任取れるの?」」
彼の放つ禍々しい空気に圧倒されたのか、榛名さんが閉口してゴクリと喉を鳴らす。それは私も同様で、物騒な言葉を満面の艶やかな笑みで吐き捨てるあの子が恐怖で声が出ない。
寒気が止まらない。半袖の袖口から出ている腕には、鳥肌が立っている。
あの子なら何の迷いもなしに首を絞めて、いとも容易く人を殺めてしまう可能性が拭えないからこそ、私はこんなにも脅えているのだ。