僕の欲しい君の薬指



私の気のせいでなければ、二日間離れたせいで天糸君の糖度が前にも増している。


同じ部屋の中で生活しているのに何処にでもついて来ては自分の腕の中に私を閉じ込める。


食事の時とお風呂の時とトイレの時を除いて、まるで右も左も分からない幼い子供みたいに私の後をついて回り、視線が合った途端無言で両腕を広げる天糸君にまさに今、私は抱き締められている。



「天糸君」

「なーに、月弓ちゃん」



肩に凭れさせていた美しい貌を起こして、わざわざこちらの顔を覗き込む相手に胸が高鳴るのはきっと条件反射みたいなものだ。右に首を折る彼に合わせて、ブロンドの細くて柔らかな髪が流れていく。


知らぬ間にすっかり伸びた彼の髪。襟足は服に届く位長くなっていて、前髪も翡翠色の瞳を若干覆う程に到達している。お陰で余計に色っぽくなっていて、何だか目のやり場に困って視線を泳がせる。



「紅茶のおかわり淹れたいから、放して欲しい」

「やだ、僕も一緒に行く」



予想していた回答に、やっぱりそうきたかと胸中で頭を抱えた。


こんな平々凡々な私にどうしてここまでこの子は執着するのだろうか。私の腕に巻き付いて本当にキッチンまで同伴する彼の表情は、とても嬉々としていた。


< 140 / 305 >

この作品をシェア

pagetop