僕の欲しい君の薬指

私の前にこの子が現れてから二ヶ月が過ぎ去り、カレンダーの頁が七月に変わっていた。それは即ち、榛名さんとランチをした日から今日で一週間が経っている事を示している。


もしかしたら榛名さんに会えるかななんて心を躍らせていたけれど、この一週間、私が大学で榛名さんを見かける事はなかった。それと同時に、私の頭に定期的に過るのは榛名さんがどんなお仕事をしている人なのだろうかと云う疑問だった。


羽生 天として天糸君が表紙を飾っていたあのファッション誌の新しい号を見れば分かる。そう榛名さんが云っていたから、正直のところずっと気になって気になって仕方がなかった。



「今日が発売日…だよね。」



おかわりの分の檸檬紅茶が揺れるグラスを凝視しながら、つい小さく声が漏れてしまう。

榛名さんがほぼ毎日と云って良い程メッセージを送ってくれていたので一週間も顔を合わせていない気が全然しない。因みに本日も『雑誌、チェックしろよ。月弓の反応が楽しみ』と云う内容のメッセージを携帯が受信していた。


雑誌をチェックすれば分かると云う事は、榛名さんは芸能界関係の人でまず間違いはないだろう。身体を絞っているとも言っていたのだから、きっと被写体になる機会がある人に違いない。


そこまでは何となく察しがつくにも関わらず、肝心の榛名さんを見る度に抱く既視感の理由が分からないままでいる。


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