僕の欲しい君の薬指
暑さのせいか、火照った私の頬にピタリと掌を添えた彼の体温が冷たく感じた。
「ねぇ、月弓ちゃん」
「どうしたの、天糸君」
視線を伸ばして、随分と上にある彼の麗しい貌を見つめる。ゆるり。彼が頬を緩めたけれど、翡翠色の双眸からは温度を感じない。
そんな彼に違和感を覚える。私の髪を可愛がる様に撫で付ける手付きは普段と何ら変わりないはずなのに、上手く言葉にできない異様さが肌に纏わり付く。
けれど、数秒もしない内に彼が開口した事によって、奇妙な違和感と異様さの謎が解けた。
「どうして僕を差し置いて珠々を真っ先に庇ったの?」
「へ?」
「僕よりも珠々が好き?珠々の方が月弓ちゃんにとっては大切なの?」
「違…「言い訳は良いよ。もう我慢の限界、こうなったら無理矢理にでも…」」
“月弓ちゃんを僕だけの物にするね”
狂気に染まった台詞に喉が絞め付けられているみたいに苦しくて、心臓が異常な跳ね方をした。
その刹那、彼の腕によって軽々と持ち上げられた私の身体はあっという間に宙に浮いて、自由も抵抗力も奪われた。